『掴んだ先に』 もう いらない。 何も欲しくなかった。 失いたく、なかったから・・・。 お願い。 触らないで。 誰も僕に近づかないで。 イヤなんだ。 怖いんだ。 もう・・・たくさんだ・・・。 この手からナニカ失われるのはもう。 ・・・いやだった。 君の手が、肩をたたく。 近づかないで。 触らないで。 手を、触れないで。 叫んだんだ。  身を硬くして。 自分で自分を抱きしめて。 次の日も、次の日も。次の日も。 君は来て。手を差し伸べる。 いらない、て言ってるのに。 君は・・・貴方は懲りずに。 毎日毎日。 本当に懲りずに。 手を差し伸べてくる。 酷いコトたくさん言ったのに。・・やったのに。 毎日毎日。懲りずにやって来ては、手を差し伸べるんだ。 毎日くるんだ。 僕が見るのは暗闇。 暗闇の中で見るモノは安堵。 寂しさなんて知らない。 知らないフリをする。 この寂しさよりも、ずっと辛い痛いコトがあることを知ってしまったから。 ずっと自分だけを抱きしめて。 目を閉じる。耳を塞ぐ。 暗闇にあるモノは安堵。平安。 言い聞かす。 外がうるさい。 せっかく慣れてきたんだ。 心地好くなってきたんだ。 邪魔をしないで。 うるさい。 僕は振り払う。 それを毎日毎日繰り返して。 だんだん。ワケがわからなくなってきてしまった。 ナニにどう、意地を張っていたのか分からなくなってしまった。 ・・・意地? あんまりにうるさいから。 僕はついにその手を取って、文句を言ってやろうと思ったんだ。 正面から。 そして、いつものように着た貴方の手を、掴んだ。 掴んでしまった。 そのとき初めて知った。 貴方を。 貴方の姿を。 僕はいつも下しか見ていなかったから。 自分の中の暗闇しか見ていなかったから。 知らなかったんだ。貴方の姿を。 そんな当たり前のことに気付いて。 そんな自分に驚いて。 掴んだ手の温かさに驚いて。 優しさに、驚いて。 忘れかけていた感触。 こんなに、こんなに温かいものだった? 優しいものだった? ああ。 わかった。 だからだ。 だから僕は触れたくなかったんだ。 貴方の手は、温かくて。優しくて。 ふいに涙が零れ落ちた。 だからだ。 思い出した。 本当は何時だって縋りたかった。求めたかった。 ずっと望んでいたんだ。それを僕は知っていた。 だから拒み続けてた。 もう、失うのはいやだったんだ。 怖かったんだ。 触れた貴方の手は、温かくて。 泣くから。 優しくて、あったかくって。 たくさん、たくさん。 涙が溢れでて止まらなかった。 貴方が悪いんだ。 触れないで、て言ったのに。 あれほど言ったのに。 貴方が悪いんだ。 僕はまた求めてしまった。 掴んで、握りしめた。 僕は弱いから。 ・・・弱いから。。。 わかってたんだ。 握りしめた貴方の手は温かくて。 ああ。貴方はいつも微笑んでいたんだ。。 知らなかったよ。 暗闇は、安堵。 貴方の手は、怖い。優しい。温かい。人のぬくもり。安らぎ。愛・・・。 言い切れない。 貴方が悪いんだ。 ・・・ありがとう。 僕を暗闇から連れ出してくれて、ありがとう。 きっと、強くなるから。 差し伸べられた手。 引っ張られて、今はまだ前にある手。 いつかは隣りにいてみせるから。 待っていて。 強くなるから。 ありがとう。 懲りずに手を差し伸べてくれて。 ありがとう・・・。 強く、なるから。 *********** 900番のキリバンに空華彩の叶夜泪様に頂きましたv 素敵すぎデスvvvv 最初これを見た時は、 まさかキリバンのなんて思わなかったんですけど 見ながら感動しておりました(苦笑)。 どこが、ってか全てが良いデスvv 泪様、ホントにありがとうございましたっ!
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