+第一章+




私とレイという少年の間に妙な風が吹く。 『わっ・・私はきさらっていうの、貴方は?・・・・人間じゃないの?』 と、不思議そうな顔をしてレイを見る。 レイはクスっと笑い 本当に目をまんまるにして一回も視線をそらさずに自分を見つづけるき さらが面白かった。 『俺は・・・』 レイは言葉に迷った。 こんな純粋そうな子に俺は人間ではないと素直に言うまで時間がかかった。 きららは何も言わないレイの返事を待つしかなかった。 しかし、レイは少しうつむいて小さな力強く咲いている桜草を見た。 そして重たい口を開いた。 『俺は・・・エルフ族っていう・・』と、話を続けようとしたが それはきさらによってさえぎられた。 レイの近くまでそっと近寄り銀色の髪をふっと触る。 びくんと震えるがレイは何も言わず近くにいる彼女をみて ふっと笑みを浮かべる。 『エルフ??族?』 一気に本題に戻った。 『そう、エルフ=森の民という意味なんだ。人間と話したのは初めてなんだ。』 『私も・・・初めてだよ』と、笑う。 その笑顔につられて笑うレイ。 『・・・――』 そして静かに時間だけが過ぎていく。 何を話すわけでもなく。 お互いを探るわけでなく。 ただ”一緒にいる”という心地よさだけで時間は過ぎていったようなものだった。 近くに勿忘草と桜草は仲良さげに寄りかかりながら咲いている。 まるで初めてだとは思わないようなレイとキサラ、2人の関係のようだった。 そしてきさらは口を開いた。 「レイのお父さんとお母さんはどこにいるの?なんでここにきたの?」 と、最初に沈黙・・・静かな時間を破ったのはキサラだった。 レイは何も答えずにきさらの顔をみた。 「どうしたの?」 「・・・・・うん」 きさらは空をみて 「私はね、いつか必ずお母さんが迎えにきてくれると信じてるんだ ・・・だからこうやって年に1度エヴァ様の所にきているの」 と、悲しみを隠した笑顔でレイに話し掛けた。 レイは何も言わずにスッーと立ち きさらのすぐ近くまできて抱き寄せた。 「悲しいなら泣いてもいいんだよ」と、きさらの背中に手をポンと置くと どこからかこみ上げてくる今まで隠していた悲しさが・・そして寂しさが 涙となって溢れ出てきた。 「・・・っ」 少女は今日会ったどこも誰もかもしらない相手に 傍にいてもらい8・・10年分もの涙を流しつづけた。 そしてまた静かに時間は過ぎたのだ・・・。 by 鷹之倉翠
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